「ひとり親相談窓口」にて(先取特権)

公益社団法人家庭問題情報センター千葉ファミリー相談室です。

今回は、子の養育に関する民法等の改正について新たな進展がありましたので、その話をします。


相談者:

「先日のニュースで、令和6年に改正された民法で新設された「法定養育費」を一人月2万円にする案が発表されたと聞きました。

そのニュースの中で、養育費の上限額を一人月8万円にする案が発表されたとも聞きました。

この一人月8万円が上限額というのはどういうことでしょうか。」

支援員:

「このことについては少し説明が必要です。

そもそも、これまでは、父母で話し合って決めた養育費が支払われなくなった場合、

公証役場で作成する公正証書や裁判所が作成する書面(調停調書等)がないと給料等の差押えができませんでした。

しかし、令和6年に改正された民法が今後施行されると、当事者間で作成した合意書や協議書などの私的な文書が、一定の要件を満たしていれば、差押えができるようになります。」

相談者:

「いきなり差押えができるのですか?」

支援員:

「はい、直ぐに差押えができるのです。

令和6年に改正された民法で、養育費債権に「先取特権」(「さきどりとっけん」と読みます。)という担保権が付いたことによって、差押えができることになりました。

先取特権というのは、住宅ローンなどの抵当権と同じ扱いです。

住宅ローンの返済が滞れば、銀行が抵当権が付いた不動産を差し押さえることができますよね。

先取特権はそれと同じような法的効果があります。

なお、差押えができるのは、改正された民法が施行されて以降の養育費になります。」

相談者:

「それでは、私的な文書が、一定の要件を満たしていればというのはどういうことですか?」

支援者:

「それは、私的な文書が、「先取特権の存在を証する書面」と認められるための支払条項などの一定の要件を満たす内容であればということです。

そこで、現在、法務省が、研究会を立ち上げて、要件を満たした「モデル合意書」を検討しているところです。

そして、先取特権は、他の債権者を害さないことが求められるので、差押えできる上限額を取り決める必要があります。

それが、今回、一人月8万円という上限額という案が発表されたということです。

例えば、私的な文書で養育費を一人月10万円と取り決めても、一人月8万円までは差し押さえることができるが、一人2万円は差し押さえられないということになります。

ところで、公正証書や調停調書等で取り決めた場合は、このような上限額はありませんので、これまでどおり、取り決めた額全額を差押えることができます。」



このコラムを書いたのは・・・

公益社団法人家庭問題情報センター 千葉ファミリー相談室

内閣府認可の「公益社団法人 家庭問題情報センター」の傘下にある全国組織の団体。平成6年に、よりよい社会の形成の推進に寄与することを目的として開設され、元家庭裁判所調査官、元法務技官、臨床心理士、スクールカウンセラー、調停委員経験者などで構成される。家庭問題の解決、児童の健全育成、高齢者等の福祉の増進に資するため、後見活動、面会交流支援、相談・カウンセリング、講師派遣活動、証人活動などを行っている。

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